素直になれない夏の終わり
「よし、なっちゃん。テンション上げて、レッツゴー!」
「……やめてよ恥ずかしい。外で大声出さないで」
夏歩は人目を気にするように廊下に視線を走らせる。
幸い誰もいなかったけれど、それでも外で大声を出されたら誰に聞かれているかわかったものではない。
最悪、苦情が来る。もしくは、苦情を受けた大家さんが訪ねて来る。
どちらも嫌だなと思いながら、夏歩は締めた鍵をショルダーバッグにしまって振り返った。
「なんか、遠足みたいだね」
リュックを背負った津田が、上機嫌にヘラっと笑う。
「遠足みたいなのは津田くんの格好だけでしょ」
そのリュックにはお弁当も入っていることだし。
更には、本当に遠足のように、防寒具や念の為の折りたたみ傘、敷物なんかも入っている。
「テンション低いなー。いくらインドアとは言っても、なっちゃんだって学生時代は“遠足”って言葉に心躍らせてたでしょ?」
「……躍るほどではなかったけど。それにたとえ躍ってたとしても、それは学生時代の話であって、この年になってから休みの日に突然“遠足だー!”って叩き起されても、テンションは上がらない」
むしろ下がる。だだ下がりだ。