素直になれない夏の終わり
「正確には、“ピクニック”ね。あっ、“デート”ってつけるのも忘れないで」
先に“遠足”と言い始めたのはどこのどいつだと睨みつけても、津田は一向に気にした様子もなく、というより夏歩の方を見てすらなく、スマートフォンで時間を確認している。
「コンビニ寄らなきゃいけないから、少し急ごうか」
なっちゃんにココア買ってあげないといけないし、と呟く津田は、睨みつける夏歩の視線をようやく受け止めて、いや受け流して「こっちだよ」と指差した方に歩き出す。
ココアを買ってもらわなければいけないので、それも期間限定のマシュマロ入りココアを、夏歩はそこで回れ右して家の中に駆け戻ったりせず、素直に津田のあとを追った。
「そう言えば、どこに行くのかまだ聞いてない」
例によって、夏歩は目的地を知らない。
「着いてからのお楽しみって言ったら?」
ニッコリ笑った津田に、夏歩はグッと握った拳をよく見えるように胸の辺りまで掲げてみせた。
「とりあえず殴る。そして私は帰る。それから二度寝する」
とりあえずで人を殴ってはいけません、と津田は、夏歩の拳に手の平を被せて下に向かって押しやる。