素直になれない夏の終わり

「殴られたくなかったら教えてくれたらいいでしょ」

「女の子の台詞とは思えないね。なんでそうすぐ暴力に訴えるかな」

「津田くんがもったいぶるのが悪い」


その後も結局何を言っても目的地は教えてもらえないまま、それでも夏歩の拳が繰り出されることはないままに、コンビニが見えてきた。

先行して自動ドアをくぐった津田は、「あったかいのがいいよねー」と迷うことなくホットのドリンクコーナーに行き先を定める。

そんな津田の背中に夏歩は手を伸ばし、なんとか指先に引っかかった上着を掴んで歩みを止めさせた。

振り返った津田が、不思議そうに首を傾げる。


「なっちゃんは、まさかの冷たいのがいいの?」

「違う、そうじゃない」


スッと夏歩が指差したのは、レジ上に設置されたパネル。

そこには注文後に店員が作ってくれるドリンクのメニュー表があって、通常メニューの隣に、期間限定メニューが写真付きで、しかもパネルを一枚どどんと使って大々的に宣伝されていた。
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