素直になれない夏の終わり
「じゃあ、なっちゃん。これに乗ろうか」
「……はい?これってどこ行き――ちょっ、押すな!」
夏歩が行き先を確認しようとしたら、それを阻止するように津田に背中を押される。
「そこ空いてるから座ろう」
抗議する暇もなく、夏歩は津田によって空いている席に誘導される。
“そこ”と限定しなくても、あっちもこっちもガラガラのスカスカなのだが。その人の少なさが、またこれから向かう場所への不安を倍増させる。
「ゴミ、捨ててくればよかったね。うっかりしちゃった」
腰を下ろしたところで、とっくに空になっていたフライドポテトの容器を見ながら津田が苦笑する。
夏歩も思い出したように手元に視線を落とすと、飲み終えたココアの容器をしばらく見つめてから顔を上げた。
「これに入れておこう」
はい、と津田が夏歩に向けて口を広げたのは、手首にぶら下げていたコンビニの袋で、そこには既に空になったペットボトルが入っている。