素直になれない夏の終わり
分別はいいのかと言う意味を込めて津田の顔を窺うと、言葉にせずとも伝わったようで、「とりあえずだから」との答えが返ってきた。
どうぞ、ともう一度促され、夏歩は持っていたココアの容器を袋に入れる。
続けて津田もフライドポテトの容器を入れると、袋の口を縛ってリュックにしまった。
一連の作業が終わってしばらくすると、間もなく発車の合図が鳴り響く。やがてゆっくりと、列車が走り出した。
向かいの座席に人が座っていないのをいいことに、夏歩はそちら側の窓に目を凝らす。
窓の向こうを流れる景色に、何か行き先の手がかりになるようなものが見えはしないかと。
「懐かしいね」
そんな時、唐突に隣から聞こえてきた言葉に、夏歩は反射的に窓から津田へと視線を移した。
「なっちゃん、高校の時は電車通学だったでしょ。懐かしくない?」
「別に。だって、私が使ってたのはこの路線じゃないし」
確かに高校の時夏歩は電車を使って通学していたけれど、だからといって全ての電車に懐かしさを感じるわけではない。
まあ椅子の座り心地や、足元から伝わってくる振動、ガタンゴトンと線路の上を走る音なんかは、言われてみれば多少懐かしくはあるけれど。