素直になれない夏の終わり

「俺は、懐かしいよ」


堂々と言い切った津田を、夏歩は訝しげに見る。


「……津田くんって、確か自転車通学じゃなかったっけ」

「でも雨の日と雪の日は乗ってた」


言われて思い出す。確かに津田は基本的には自転車通学だったけれど、自転車に乗れないような悪天候の日には電車を使っていた。

その為、梅雨の時期と冬は毎日津田と一緒で、夏歩がげんなりするのとは反対に、津田はやたらと嬉しそうだった。

今もまた、大変嬉しそうに、楽しそうに、流れる景色を眺めたり、時折隣の夏歩を窺ったりしている。

夏歩の方も、列車が減速する度に何気なさを装って津田の様子を窺い、降りる気配がないとわかればまた窓の向こうの景色を眺めた。

通り過ぎる駅名は、どれも知らないものばかりで、当然景色にも見覚えはない。

本当にどこに向かっているのか、どこに連れて行かれるのかと思っていたところで、ようやく津田は「次で降りるよ」と言った。
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