素直になれない夏の終わり
我慢しきれず夏歩が呟くと、すぐさま津田にたしなめられた。
「なんにもないんじゃないよ。これはね、自然が豊かって言うんだよ」
「それって、自然以外何もないって言ってるのと同じじゃない?」
「同じじゃないよ」
そうだろうかと夏歩は首を傾げるけれど、津田はそこを譲るつもりはないらしい。
これ以上は不毛な言い合いになりそうだったので夏歩は言い返さず、改めて自分の周りをぐるりと一周眺めてみた。
線路を超えた向こうにはどこまでも田畑が広がり、コンビニもスーパーも見当たらない。
夏歩の背後にある駅舎は塗りが禿げてボロボロで、その裏には背の高い木が生い茂っている。正しく豊かな自然だ。
駅舎の隣にポツンと設置された、内訳がまだほとんどつめたーいの自動販売機を眺めていると、「そろそろ行こう、なっちゃん」と津田の号令がかかった。
夏歩が自動販売機から外した視線を声のした方に向けると、「こっち」と前方を指差した津田が、少し離れたところに立っていた。
「……こっちじゃないの?」