素直になれない夏の終わり

塗装が禿げて錆び付いて下から二段目が外れかかっているとは言っても、たかだか数段の階段だ。それほど急でもない。


「“キャッ”とか可愛い声上げてくれたら、振り向いて抱きとめることもできるから」

「残念でした。もう降りちゃった」


先に降りきった津田が振り返った時には、既に夏歩も降りきっている。足が完全に地面についている。なにせ、たかだか数段の階段なのだから。

そして降りきった先、降りきる前からわかっていたことではあったけれど、見渡す限り木、自然、緑、他には何もない。

まあむしろ、そんなところにコンビニやスーパーがあって、田畑が広がる線路の向こう側より栄えていたらビックリなのだが。


「なっちゃんが転ばなくてよかったけど、華麗に抱きとめて惚れ直して欲しかったところもあるから、凄く複雑……。もう、どうしてくれるの、なっちゃん」

「知るか。て言うか、そもそも惚れてないから!まずはその前提をどうにかしろ」

「ええー、だって――」


続いた津田の言葉を、あえて夏歩は聞き流した。いやむしろ、聞こえなかったことにした。

毎度のことながら、その根拠のない自信は一体どこから湧いてくるのか、歩き出した津田の背中を眺めながら夏歩は思う。
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