素直になれない夏の終わり
ヘラっと笑った顔が腹立たしくて睨みつけるも、もちろん津田の笑顔は変わらない。
ならばと夏歩は、早々に睨むのをやめて歩調を早め、津田を追い越して先に進んだ。
どうせ道は一本きり、人の手が入ったその道は自然の中で浮いたようになっているので大変わかりやすく、迷う心配もなければ案内も必要ない。
「あっ、ちょっとなっちゃん。ピクニックデートなんだから一緒に行こうよ」
「ただのピクニックでしょ。わざわざデートとかつけるな、鬱陶しい」
「そこは俺的こだわりポイントだから譲れないよ」
激しくどうでもいいと言うか、どうせこだわるならもっと別のところにこだわれと言ってやりたい。例えば?と聞かれた時に面倒くさいので言わないけれど。
「ねえ、なっちゃん。待ってってば。もっとゆっくり行こうよ、景色とか楽しみながらさ」
「おんなじような木しか見えないのにどう楽しめって言うのよ」
「木じゃなくて足元とか。ほら見て、何かしらの花が咲いてる」
「……雑な紹介過ぎて全然心に響かない」
それでも一応、津田が指差した方にチラッと視線を向けて、夏歩は“何かしらの花”を確認する。