素直になれない夏の終わり
“何かあるわけじゃないけど、何もないわけでもない”
津田の言っていたことが、その謎かけじみた台詞の意味が、そこでようやくわかった。
登って登って辿り着いた先は、それまで同じ景色しか見せてこなかった木々が、ご覧下さいと言わんばかりに開けていて、眼下に広がる町並みが見渡せるようになっていた。
駅舎から人の姿は全く見えなかったけれど、こうして見ると、畑の中に微かに動く人の姿が見える。
田んぼには、まだ金色になりきっていない青い稲。それが全て金色に染まったなら、きっともっと綺麗なのだろう。
田んぼと畑以外にも、先程は見えなかった民家や、見慣れたコンビニやスーパーの看板、道路を走っていく車などが見える。
「あの町の向こうにまた別の町があって、その向こうに更に別の町があって、山とか川とか隔ててまた違う町があってって考えると、世界は広いなあって思わない?」
「ありがちな感想」
津田の楽しそうな台詞に、夏歩は一言で返す。
世界は広い、なんて月並みな言葉だろう。でもそれと同じくらい月並みで、全く逆のことを言っている言葉もある。