素直になれない夏の終わり
美織が肩を掴んで軽く揺すると、その揺れと呼び掛けに、夏歩は閉じていた目を薄っすらと開ける。
とろんとした目を美織に向けて、夏歩はふにゃっと笑った。
「あっ、みおりだぁー。やっほー、げんきぃー?」
どうしよう、すっごくかわ――と呟いた津田を、美織は睨みつけて黙らせる。
夏歩が同じことをしても動じない津田だけれど、相手が美織となれば話は違う。
「どうしてくれるのよ全く。これじゃあ送って行っても、家に一人で置いておけないじゃない。あたし、明日は朝から用事があるから泊まれないっていうのに……」
困った様子の美織を、津田はチラッと窺うように見て「あのー……」と遠慮がちに手をあげる。
「俺が、代わりに泊まって、なっちゃんの、面倒を…………」
美織から睨むような鋭い視線を向けられて、津田の言葉は尻すぼみに小さくなって言い切る前に消える。
下を向いて小さくなる津田をしばらく睨みつけていた美織は、「まあ、他にどうしようもないものね」と呟いた。
途中退出した者もいたので、始まった時より更に人数が少なくなった座敷では、あっちこっちに酔い潰れた者の姿がある。
正気を保っている者も若干名残ってはいるが、彼ら彼女らもそれぞれに、酔っ払いの介抱に忙しい。