素直になれない夏の終わり
眼下に広がる町並みから空へと視線を移した津田は、腕を突き上げるようにして大きく伸びをした。
夏歩からは背負ったリュックが少し邪魔そうに見えたけれど、津田は別段気にした様子もなく、腕を下ろしたあとは深呼吸をしたりしている。
また“空気が美味しいね”などと月並みな感想を言うのかと思ったら、夏歩の予想に反して津田は何も言わなかった。
深呼吸を終えたあとは、ただ黙って満足そうに景色を眺めている。
それに習うわけではないけれど、夏歩もまた黙って眼下に広がる町並みを眺めた。
風が吹くと、葉っぱどうしが擦れ合うサワサワという音が二人を包み、時々頭上で鳥が鳴き交わす声が聞こえたりして、何とものどかで気分がのんびりしてくる。
乗り継ぎも必要ない、最寄りの駅から列車で数駅離れただけでこんなに景色が変わるなんて、驚きだ。
「せっかくだからなっちゃんも思いっきり深呼吸してみなよ。気持ちいいよ。あっ、ヤッホーとか叫んでみる?せっかくだし」
「山じゃないんだからやめて」