素直になれない夏の終わり
「そう言えばそうだった……なんでそんな素敵な思い出を忘れてたんだろう。確か、焼きそば作ったんだよね。あの時、人参切ってるなっちゃんが危なっかしすぎて怖かった」
どうやら、いらぬことを思い出させてしまったらしい。
確かに津田の言う通り、高校一年の炊事遠足で、二人の班は焼きそばを作った。そしてその時夏歩は、人参を切る係りを任された。
最初は薄切りでお願いされていた人参だが、夏歩の包丁さばきがあまりにも班員に恐怖を与えた為、最終的に厚くていいからとにかく指だけは切らないでくれ!とのお願いに変わった。
おかげで人参だけ火の通りにばらつきが出て、所々生だった。
「……だから私はあの時、キャベツをちぎる係りがいいって言ったのに」
自分の実力は自分が一番良くわかっているから、夏歩だって班員になるべく迷惑をかけないよう、最初はキャベツ係りに立候補したのだ。それなのに担任ときたら
「だってしょうがないよ。先生が、やらなきゃ上手くならないんだから、なっちゃんに積極的に包丁持たせろって言うから。まあでも、先生も言ってから後悔したと思うよ」
そう言って、津田が苦笑する。