素直になれない夏の終わり
そんなことをし始めたら即座に他人のふりをしてやろうと思ったが、「それは流石に」と津田はフランスパンを取らずに前を通過する。
夏歩が持っているトレイには、既に津田が目をつけていた揚げたてのカレーパンが載っていた。
「ちょっと俺、サンドイッチも見てくるね」
「……そんなに食べて、夕飯どうするの」
「見てくるだけだよ」
そう言って津田は笑みを浮かべ、サンドイッチコーナーに向かっていく。
今のうちに自分の分を決めてしまわなければと、夏歩は並ぶパンに視線を戻した。
自家製カスタードのクリームパン、ツヤツヤ輝くフルーツがたっぷり載ったデニッシュ、津田が選んだトレイの上のカレーパンも揚げたてで美味しそうだし、チョコがたっぷりのチョココロネや、チーズがとろけたピザトーストも、見ればどうにもそそられてしまう。
そんな中でも、一番夏歩の心に刺さったのは、クリームチーズ入りあんぱん。
店長のお勧めであるらしいその商品が、目に入った時から夏歩は気になっていた。
それでも他の物を見ればそちらにも目移りしてしまって、夏歩はトングをカチカチと開いたり閉じたりしながら迷うように視線を動かす。そこに、サンドイッチを見終えたらしい津田が戻って来た。