素直になれない夏の終わり
「サンドイッチのところにね、“コロッケサンドただいまコロッケ揚げたて!”ってのがあったよ。そっちも凄く美味しそうだった」
心惹かれたようではあるけれど、津田はそれとカレーパンを交換するとは言わなかった。
「なっちゃん、決まった?」
まだの夏歩は「もうちょっと……」と答えて、あっちこっちに視線を忙しなく動かす。
そんな夏歩を見て「正に、目移りって感じ」などと言って津田は笑った。
夏歩は津田を無視して真剣にパンを眺めると、迷いに迷って迷いまくった末に、最初から気になっていた店長お勧めのクリームチーズ入りあんぱんをトレイに載せた。
お会計は当然割り勘にするつもりで、と言うか自分の分は自分で払うつもりで、夏歩は財布を出してスタンバイする。けれどそこで津田が
「なっちゃん、細かいの持ってる?俺今、大きいのしか持ってないんだ」
と、五千円札を取り出してみせた。
「え、私だって、小銭はそんなに持ってな――」
「そっかー、残念。じゃあ今回は、俺が払うねー」
夏歩が最後まで言い終わるのを待たずに、津田は店員に五千円札を渡してお会計を済ませ、袋に入れてもらった商品を受け取る。
毎度お会計の度に割り勘を主張する夏歩の扱い方を、どうやら津田は心得てきたらしい。