素直になれない夏の終わり
「ちょっと津田くん!さっきのはずるいと思う。それに、小銭はないけど千円ならあるから、はい」
「千円はどう考えても多いでしょ。一つ千円もするあんぱんってどれだけ高級?」
「うっさい!いいからさっさと受け取れ」
もちろん津田がその千円を受け取ることはなく、なんだかんだ、のらりくらりとかわされて、気付けばその千円札は夏歩の財布に戻っていた。
フードコートで向かいに座る津田を不満げに睨みつけながら、夏歩は袋から自分のあんぱんを取り出す。
夏歩が取ったのを見て、自分の方に袋を引き寄せた津田はカレーパンを取り出しながら「あっ、そう言えば」と口を開いた。
「さっきパン屋にいた時、コロッケサンドを見て思い出したことがあってね。高校の時なっ――」
「それ以上言ったらグーで殴る」
コロッケサンドと言うよりは、おそらくコロッケの方で思い出したのだろう。
それで思い出される高校の時のエピソードとくれば、何を話そうとしていたかは夏歩にも大体想像がつく。
「危うく、調理室が燃えちゃうところだったよね」
「……っ、言うなって言ったのに!」