素直になれない夏の終わり
「……目が離せないんじゃなかったの。確か、鍋から一瞬たりとも離れられないって」
「なっちゃんはキャベツよりずっと手がかかるってことだね。もう、そんなにかき回したら引き出しの中がぐちゃぐちゃになっちゃうでしょ」
さりげなく夏歩を引き出しの前からどかした津田は、既にぐちゃぐちゃになった引出し内を手早く元に戻していく。
「こういう時はね、手で混ぜちゃっていいんだよ。なっちゃん、そういうの気にする人じゃないでしょ。ほら、高校の時にハンバーグ作ったの思い出して。あんな感じでやってみて」
そう言って、津田は結局引出し内を片付けただけで混ぜるものを出してくれなかったので、夏歩は改めて念入りに手を洗ってから、“高校の時のハンバーグ”と言うワードを心の中で唱えつつ、ボウルの中に手を入れた。
「ぐ、ぐにゅぐにゅしてる……」
「なっちゃん、ハンバーグ作った時も同じこと言ってた」
クスッと可笑しそうに笑って、津田は取り出したまな板の上に玉ねぎを載せると、夏歩が思わず目をむくような速さでみじん切りにして、横から調味料と一緒にボウルの中に入れていく。
「……全然鍋から離れてるじゃない。目が離せないどころか見てもないし」
「見てはいるよ、ちゃんと。ほら、チラッ。あっ、もういい感じだ」