素直になれない夏の終わり
「……どうって、別に……何もないけど」
それだけ答えてスッと視線を逸らした夏歩は、足早に部屋を出ようとして津田に呼び止められた。
「お風呂沸いてるけど、ぼんやりしすぎて溺れないようにね」
「……溺れるか!」
皮肉っているわけではなくて、真面目に心配している様子の津田に、いつも通り強めに言い返して、夏歩は一旦クローゼットまで戻って下着を取り出すと、今度こそ部屋を出る。
すれ違う時に津田の顔を見ないように下を向いて、夏歩は脱衣所に入ってドアを閉めると、閉めたドアを背にして深く息を吐いた。
自分の様子がどこかおかしいことは、夏歩自身もなんとなく気が付いている。
それもこれも全て、お昼休み終了間際の美織との会話が原因だった――。
「……いや、そんなこともない、と思うけど……。津田くんにだけとかじゃなくて、みんなに同じような感じだと……」
「夏歩は思ってるのよね。それが、間違いだって言ってるのよ」
濁した夏歩の言葉尻をさらった美織が、その後できっぱりと言い放つ。