素直になれない夏の終わり
「津田にだってそう見えてるわよ。だから、あんなに諦めないでいられるんでしょ。夏歩は素直じゃないだけだって、知ってるから」
「知ってるもなにも、それは全部津田くんの勘違いで……」
気が付いたら俯いてテーブルに向かって喋っている夏歩に、美織は呆れたように息を吐いて、それからまた優しい顔で、そっと夏歩の頭に手を伸ばした。
「いい加減、素直になりなさい」
ポンっと頭に置かれた手も、声音も優しくて、夏歩が顔を上げると、笑顔までも優しかった。
「夏歩が素直じゃなくて、でも津田はめげなくて、そういう二人を近くで見てるのは案外楽しかった。でもね、もう飽きちゃった」
頭に置かれていた美織の手が、スッと離れていく。顔にはまだ、笑みが浮かんでいる。
けれど、優しかったその笑みは、段々と意地悪なものに変わっていく。
「いい加減、素直になりなさい」
その顔で、美織は同じ台詞をもう一度繰り返した――。
「はあ…………」
ため息が、思っていた以上に脱衣所に響いて、夏歩はビクッと肩を跳ねさせて振り返る。