素直になれない夏の終わり

行きついてはいけないところに、自分はもうすぐ、行きつこうとしている。
もしくは、気が付いてはいけない、気が付かないようにしていたことに、気が付こうとしている。

今更目を逸らしてもきっともう遅くて、もう、知らないふりは出来ない。

それでも今はこれ以上考えたくなくて、今はと言うかむしろこれからもこれ以上は考えたくなくて、夏歩は何かを振り払うように豪快に頭を横に振ると、ぼさぼさの頭をそのままに一気に服を脱いで洗濯カゴに押し込み、すりガラスのドアを勢いよく開けた。



「あっ、なっちゃん。お弁当洗いたかったから勝手に出したよ」


部屋に戻って早々津田から言われた言葉に、夏歩は自分が鞄を置いた辺りを見やる。
そこにはもう何もなくて、視線を移動させるとハンガーラックにかけられているのが見えた。


「なっちゃん、熱いのが行くよー」


“熱いの”に反応して慌てて声のした方に視線を動かせば、鍋つかみを両手にはめた津田がキッチンからテーブルへ土鍋を運ぶところだった。

その土鍋は買ったのか、それとも津田が持ってきたものか、鍋つかみも同様に、夏歩には見覚えがない。
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