素直になれない夏の終わり
「なっちゃん、ちょっとこれ敷いて」
そう言って津田は、顔だけで夏歩を振り返り、テーブルの上に脇に挟んでいた鍋敷きを落とす。
なぜ運ぶ前に敷いておかないのかと思いながらテーブルに向かった夏歩は、言われた通りに鍋敷きをテーブルの真ん中に敷いた。
ちなみに、その鍋敷きもまた夏歩には見覚えがない。
「今日は鍋なんだ」
土鍋が鍋敷きの上に置かれたところで夏歩が呟くように問いかけると、津田は笑顔で「うん」と答える。
「そろそろお鍋の季節だしね」
そう言えば、そんな話をしたような気がする。その時津田は、夕飯をお鍋にしてもいいかとも聞いた。すっかり忘れていたけれど。
じゃーん!と津田が効果音付きで蓋を開けると、もうもうと立ち上る湯気に、夏歩は覗き込もうとした顔を咄嗟に引いた。
「……ちょっと煮立たせすぎじゃない?」
「冷めるよりはいいかと思って」
それはそうだが、それにしたって限度がある。