素直になれない夏の終わり
「手を動かすのが億劫なら、津田にやらせるからいつでも言って」
「……いい、大丈夫」
それを聞いて夏歩は、すぐさまレンゲでお粥を掬う。
ちんたらしていては、いつ津田がしゃしゃり出てくるかわからない。
お粥に息を吹きかけて冷ます行為も辛かったが、津田が余計なお節介を焼かないうちに何とか済ませ、レンゲを口に入れる。
味は、よくわからない。きっと美味しいのだろうけれど、よくわからない。
美織に言われた通り、何とか三口は胃に収めると、薬を飲んで夏歩は再びベッドに横になった。
「またしばらく寝たらいいわ。帰る時にはちゃんと声かけるから」
コクっと頷いて目を閉じた夏歩は、またすぐに目を開ける。
気付いて「なに?」と首を傾げた美織に
「……なんで津田くんがいるの」
気になっては忘れて、また気になっては忘れてを繰り返していたことを、ようやく問いかける。
美織は、テーブルの向こうに黙って座っている津田をチラッと見てから
「そんなのは後でもいいのよ。今はとにかく休む。はい、おやすみ」
強制的に会話を打ち切って、布団を顎の下まで引っ張り上げた。
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