素直になれない夏の終わり
「……なっちゃん、寝た?」
しばらくは夏歩が寝がえりを打つ音と、その度に美織が布団をかけなおしている音が聞こえるだけで静かだった部屋に、おずおずとした津田の声が響く。
振り返った美織の目に、テーブルの向こうから伸びあがるようにしてベッドの方を窺っている津田の姿が見えた。
たぶんね、と美織が答えると、津田は浮かしかけていた腰を元の位置に戻す。
そんな津田と向かい合う形になるようにベッドに背を向けた美織は、ジッと津田の顔を見つめる。
な、なに……と津田はややたじろいだような声を出した。
「あんたはあたしに、何か言うことがあるんじゃないかと思っただけ」
そう言ってまたジッと美織が顔を見つめると、津田は本能的にそっと距離を取った。
それを見た美織が、「別に怒ってないわよ」と呆れたように言う。
「あんたも夏歩も、ひとのことをなんだと思ってるのよ」
「……怒らせたら地球が終わる、的な」
「怒るわよ」
すみません、と津田の謝罪は早かった。