素直になれない夏の終わり
「で、何か言うことはあるの?ないの?」
津田の謝罪によってその話をひと段落させた美織は、またジッと顔を見つめながら問いかける。
怒ってないとは言われても、ジッと見つめられると僅かながらも恐怖心が芽生えて、津田は本能的に俯く。
傍から見れば、完全に怒っている人と怒られて項垂れている人のよう。
美織の真っすぐな視線から顔ごと逸らし、津田は俯いたままで「ある……」と答えた。
「……連絡、くれてありがとう」
「どういたしまして」
津田がそうっと顔を上げると、丁度立ち上がった美織の脚が目に入った。
視線を更に上げると、美織の顔はキッチンの方を向いている。
「お腹空いたの?」
問いかけたら、「違う」と答えながら美織はキッチンに向かった。
「このコーヒーって津田のよね。少し貰うから」
返事を待たずにお湯を沸かし始めた美織は、シンクの上に作りつけられた食器棚から、夏歩が愛用しているものとは別のマグカップを取り出す。
そこに、インスタントのコーヒーとココアの粉を少量ずつ入れた。
それを見た津田が、「あっ、俺もコーヒー」と立ち上がる。