素直になれない夏の終わり

先にマグカップにお湯を注ぎ終えた美織は、津田に場所を譲るように一歩下がった。そして、後ろから津田の背中に声をかける。


「随分と物が増えたわね」


ん?と首を捻るようにして、津田が顔だけで振り返る。


「キッチン。前は全然物がなかったのに、今じゃすっかり充実してる」


ああ、と納得したように頷いて、津田は前に向き直ってマグカップにお湯を注ぐ。


「随分と貢いだんじゃない?」

「貢ぐとか言わないでよ」

「何か間違ってる?」

「せめてもっと別の言い方があるのではと……」


先にテーブルに向かった美織の後を、津田が追う。

津田はベッドが正面に見えるいつもの場所に、美織は津田から見て右側に、それぞれ座って、湯気の立つマグカップを口に運ぶ。

津田はブラックのコーヒー、美織はコーヒーとココアを混ぜて作ったカフェモカ。

一口飲んだところで、二人してチラッと夏歩の様子を窺う。穏やかとは程遠い、辛そうな息遣いと寝顔。
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