素直になれない夏の終わり
「あんまりじっくり見てると、後で夏歩にチクってやるからね。津田が、夏歩の寝顔ジロジロ見てたって」
「なっ、ちょっ!ジロジロなんて見てないから」
美織がぽそっと呟くと、津田が慌てたように夏歩から美織に視線を動かす。
「じゃあ、じいいっと食い入るように見てた?」
「それも違う!」
必死に否定する津田に、美織は「必死に否定すると逆に怪しいわよ」といつか夏歩にも言ったことのある台詞を、またぽそっと独り言のように零す。
そんなことを言われては否定したくても出来ない、そんな気持ちが津田の表情に滲んでいて、夏歩ほどわかりやすくはないけれど似たようなその反応に、美織はマグカップで口元を隠すようにしてクスっと笑う。
「でも今更か。どうせ、毎日来るたびにじっくり見てるんでしょ?」
「だから、見てないってば!……いや、全然見てないわけじゃないけど……そんな、じっくりとは……見てない」
「どうせならじっくり見てやればいいのに。起きない夏歩が悪いんだから」
「どっち!?さっきと言ってることが違う」