素直になれない夏の終わり

「なにって……あっ、俺寝てた」


そう答えて、と言うか答えながら気が付いたようで、津田は踏まれた場所を痛そうに押さえながら、残っていた眠気を振り払うように頭を振る。

どうやら、仰向けになっていた津田のお腹に、夏歩の足が乗ったらしい。


「寝てたって、なんでそんなと…………ちょっとタイム」


津田を行儀悪く足でどかしてベッドから降りると、夏歩はトイレに駆けていく。

それを見送ったところで、津田は立ち上がって部屋に電気を点けた。その明るさに、暗闇に慣れていた目が眩しさを訴える。

しばらくして、今度は明るさに目が慣れた頃に、夏歩が戻って来た。

津田はテーブルを挟んだいつもの場所に移動して腰を下ろしていたが、夏歩はベッドの上に腰を下ろす。

ちょっとだけ津田より視線が高いのが、夏歩には新鮮だった。


「それで、なにしてるのよ。美織は?」


多少なりとも体調が回復した夏歩は、いつもの調子で津田を睨みつける。


「美織は帰った。後のことは俺が任された。でもなっちゃん寝てたから、何してようかなーと思ってたらいつの間にか寝ちゃってたみたいで、ついさっきなっちゃんに踏まれて目が覚めた」

「……そんなところで寝るのが悪い」
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