素直になれない夏の終わり
「なっちゃんは、俺がいないほうがいい?」
えっ……と思わず声を漏らし、夏歩は顔を上げる。津田は、笑っていた。笑ってはいたけれど、それは感情の見えない笑みだった。
楽しくて笑っているわけではない、かと言って怒っているわけでもないし、悲しげな感じもしない。
一体そこに、その笑顔に、津田はどんな感情を込めているのか、夏歩にはさっぱり読めなくて、読めないことが怖かった。
「……別に、そういうつもりで言ったんじゃ……」
咄嗟に否定した夏歩に、津田は「そう?」と首を傾げてみせる。
「いいんだよ、別に。なっちゃんだって、一人になりたいこともあるだろうし。お弁当洗ったら、俺すぐ帰るから。夕飯はもう出来てるから、好きに食べて」
言いながら立ち上がった津田は、夏歩が出し忘れていたランチバッグを取りにハンガーラックにかかった鞄のもとへ向かう。
「あさったりしないから大丈夫だよ。お弁当出すだけ」
その姿を咄嗟に目で追った夏歩に、津田が言う。
言葉通り鞄には必要以上に触れず、口から少し出ていたランチバッグの持ち手を掴んだ津田は、それを引っ張って取り出しキッチンに運ぶ。