素直になれない夏の終わり
「ねえ、なっちゃん。まずはその怖い顔やめない?」
「その前に、津田くんがそのムカつく顔をやめろ」
テーブルを挟んで、津田と夏歩は向かい合う。
テーブルの上に、先ほど津田がポケットから出して置いた夏歩の部屋の鍵を載せたまま、誰もそれに触らないまま。
津田はヘラっと楽しそうに笑っていて、反対に夏歩は不機嫌全開で津田を睨んでいる。
テーブルの上には鍵の他にもう二つ、コーヒーやココアのマグカップではなく、缶が置かれていた。
レモンがプリントされている方の缶を手に取った夏歩は、プルタブを開けて豪快に一口。
「ねえ、なっちゃん。その飲み方はちょっとまずいんじゃない?」
津田の気遣いを「うっさい!」の一言で切り捨てて、逆にそれに煽られたように、夏歩はまたも豪快に缶を傾ける。
まるで水のように夏歩が飲んでいるそれは、もちろん水でも、ましてやジュースですらなく、レモンのチューハイ。
それは、先ほど津田が冷蔵庫から出してきたもので、どうやらずっとそこにしまっておいたらしいのだが、それがいつからかは夏歩は知らない。