素直になれない夏の終わり
「思ったんだけど、味が色々あるなら、なんでどれがいいって聞いてくれないの」
ん?と首を傾げた津田に、夏歩はチューハイの缶を掲げて見せる。
「ああ。俺のチョイス、気に入らなかった?」
「気に入るとかいらないとかじゃなく、普通聞くでしょ」
そう?と津田はまたしても首を傾げる。
「聞かずとも、なっちゃんの今日の気分がわかっちゃうもんだからさ、俺は。外してないでしょ?」
自信ありげな笑顔から、夏歩は不機嫌面で視線を逸らす。
「ところでさ、なっちゃん」
そんな夏歩に向かって、津田はヘラっとした笑顔で声をかける。
「いつになったらこれ、受け取ってくれるの?」
“これ”と津田が指差したのは、先ほどからずっとテーブルの上に載ったまま放置されている夏歩の部屋の鍵。
間違いなくそれは夏歩の部屋の鍵で、夏歩はそれをずっと取り戻したかったはずなのだが、一向に手に取る気配はない。
一度取ろうと手を伸ばしたが途中でやめたきり、そのまま放置されている。