素直になれない夏の終わり
「なっちゃん、ずっと返して欲しいって言ってたじゃん。だからほら」
ほらほら、と鬱陶しい津田を、夏歩は鋭く睨みつける。
「こんなの、受け取れるか!!」
バンっとテーブルを叩いたら、載っていた鍵がずれて、その下に隠すように置かれていたものがあらわになる。
「こんなのって……気に入らなかった?これでも真剣に選んだんだよ。なっちゃんに凄くよく似合うと思う」
そこにあったのは、シンプルなデザインのシルバーのリング。それも、まるでキーホルダーのように鍵にくっつけてある為、鍵を手に取ったら必然的にその指輪も一緒に手にしてしまうことになる形で置いてある。
だからこそ夏歩は、初めに鍵を取ろうと手を伸ばした時、その下でキラリと光るものが見えた瞬間に伸ばしていた手を止めたのだ。
安易に手に取らなくて正解だったことは、津田の発言からもよくわかる。
「あのね、真剣に選んだとか似合うとかはどうでもいいの。問題はそこじゃないでしょ!」
「ああ、なるほど。どうせ真剣に選ぶなら、結婚指輪でそうしろってことだね。婚約指輪に気合いを入れすぎだと、なっちゃんは言いたいわけか」
「違うわ!!」
一人納得したように頷く津田を、夏歩は怒鳴りつける。