素直になれない夏の終わり
「そうじゃなくて、私はこんなところに指輪仕込むなんていう姑息な手段を問題視しているわけで、もっと言うなら、付き合ってもないのに婚約指輪なんて用意するな!」
「じゃあ付き合おうよ。それなら何も問題はないわけだよね?」
「大ありだわ!!そもそも、“じゃあ”ってなによ!」
夏歩の怒りを涼しい顔で受け止めた津田は「言い方が悪かったね、ごめん」と謝ってから
「俺と付き合おう、夏歩。夏歩のことが好きだから、付き合いたい。ずっと一緒にいたい。一番近くにいたい。だから、付き合おう。それでゆくゆくは、結婚しよう」
ちょっぴり照れたように頬を染めて、唐突にそう言った。
津田が照れるなんて珍しいことで、その珍しさが夏歩に津田の気持ちが本物であることを伝えてくる。
いつだって津田の“付き合おう”は本物だとわかってはいたけれど、今回いつにも増してそう感じるのは、いつもとは呼び方が違っていたから。
“なっちゃん”ではなく“夏歩”、その違いは大きい。普段前者で呼ばれ慣れているだけに、なおさら。
「……この状況で、いいよって言うと思ったか」