素直になれない夏の終わり
返す声にこれまでのように力が入らなかったのは、夏歩が少なからず動揺していたから。
常にない津田の照れた顔と呼び方が、夏歩の心をざわつかせる。鼓動が段々と速くなってきて、なんだか落ち着かない。
その気持ちを紛らわすようにチューハイを流し込もうとしたところで、津田がポツリと言った。
「なっちゃんが素直になってくれるまで、気長に待とうって気持ちは今も変わらないよ。でも、そんなことしてたら爺さんになっちゃいそうな気もしてる。幾つになっても恋愛は出来るからそれでも別にいいんだけど、俺としては、早く確実なポジションにつきたいとも思ってる。なっちゃんの彼氏とか、なっちゃんの夫とか。だってそうじゃないと、誰かに取られちゃうかもしれないでしょ」
中途半端に缶を持ち上げたまま、夏歩の動きが止まる。
津田の表情からは、またも珍しく不安な気持ちが見て取れた。
「……気長に待つのか、早くして欲しいのか、どっちなのよ」
常にない津田の様子に、夏歩はペースが完全に乱されているのを感じた。
それを気取られないように、中途半端に持ち上げていた缶を口元に寄せ、今度こそちびっと一口。