素直になれない夏の終わり
「ほら、顔も真っ赤だし。もうやめといた方がいいよ。これは俺が貰うから」
固まる夏歩の手から缶を抜き取って、津田の手が離れていく。
今までだってこんなことは何度もあったし、もっと直接的に手を繋いだ、もしくは津田に無理やり繋がされたことだってあるのに、その時よりずっと、おかしくなったんじゃないかと思うくらい、心臓がドキドキして手も顔も熱い。
アルコールのせいだ。これは全部アルコールのせいだ。そうなんだ。そうに違いないんだ――しつこいくらい言い聞かせるたびに、心の奥の方で“本当にそうなのだろうか?”と疑問が浮かぶ。
素直じゃないだけなのか、それとも好きじゃないのか、どっちが本当なのだろう――こんなことを考え始めてしまった時点で、いつものように迷いなく“好きじゃない”一択を選べなかった時点で、きっと答えは決まっているのに、それでも往生際悪く考える。
鍵の裏に隠された、今はもう完全にあらわになって、今度は逆にその存在をアピールするように明かりに反射して光る指輪を眺めながら、夏歩は考える。
「やっぱり、行動が先走りすぎだよね」
考えが同じところをぐるぐる回り始めたのを感じて、夏歩はそこで考えるのをやめた。やめて、思ったことをポツリと呟く。
そうかな?と首を傾げて、津田が笑う。