素直になれない夏の終わり
「用意がいいって言ってくれると嬉しいんだけど」
「そんな次元の話じゃない」
チューハイは取り上げられてしまったので、空っぽになった手が、手持ち無沙汰を埋めるために鍵に伸びそうになる。
それを何とか堪える夏歩の姿に、津田はクスリと笑った。
「なっちゃんはほんと、可愛いよね」
「……バカにしてるの?」
「可愛いは褒め言葉だよ。そんな可愛いなっちゃんが、俺は好き」
「……酔ってるの?酔ってるよね。酔ってるんだね。津田くんこそ、もう飲むのやめたらいいと思う。て言うかすぐにやめろ!」
「そう言うなっちゃんは、照れてるの?照れてるんだよね。ああ、照れてるんだね。もう、ほっっっと可愛い」
こんのっ!と拳を握って腰を浮かせたら、「口が悪いよ」と返される。
「そう言う津田くんは性格が悪い!悪すぎ!!」
「これは俺が悪いんじゃなくて、なっちゃんが可愛すぎるのがよくないんだと思う。俺以外の男の前ではその可愛さ、極限まで抑えてね。むしろゼロでもいいくらい」
反論しようと口を開いたものの、言葉が出てこなかったので一旦閉じ、でも何か言わなければとまた開いて、やっぱり言葉が浮かんでこなくて閉じる。