素直になれない夏の終わり
鯉の真似?と津田に聞かれ、ようやく夏歩の口から出た言葉は「うっさいバカ!」子供っぽいとわかってはいるけれど、それしか出てこなかったのだからしょうがない。
不機嫌全開にぶすくれる夏歩を、津田は楽しそうに眺める。
「……なによ」
見られていることが気になって、夏歩は津田を横目に睨みつける。
「俺のことはお気になさらず」
そう言って津田は笑みを浮かべるけれど
「……気にするなって言われても気になる。こっち見るな」
そこで、ああそうですかとはならない。けれどそれは津田も同じ。
「それってさ、日本語に直すと、遂になっちゃんは俺からの熱い視線に気が付いて、俺を意識し始めたってことで、いい?」
「いいわけあるか!!最初から日本語で言ってるでしょ!意味のわからない直し方するな!」
怒鳴られているのに、津田は楽しそうに笑って夏歩から取り上げたチューハイを飲む。
その余裕な態度が気に食わなくて、腹立たしくて、夏歩は顔だけでなく体ごと斜めを向く。
本当は背中を向けてしまいたかったけれど、そこまですると意識していますと言っているようで津田を喜ばせる危険性があったので、真正面から視線を受けなくて済むようにして、後は諦める。