素直になれない夏の終わり

「だから、二つともあげる。これだと、喧嘩にならないでしょ」

「……私も津田くんも、そんなに子供じゃないんだけど」


へー、そうなの。と美織の返しは大変失礼だ。


「何でもいいけど、あげるから持っていきなさい」


ほら、とまた箱が押される。
迷ったけれど、結局夏歩はその箱を受け取った。


「今度、何かお礼するね」

「いいわよ、別に。津田と仲良く分けてくれたらそれで。喧嘩しないのよ」

「しないよ!」


ならよし、と美織は頷いて、腕時計で時間を確認する。


「そろそろいい時間ね。あたし、お手洗い行ってから戻るけど?」

「あっ、じゃあ私も」


夏歩が急いでお弁当を片付けて立ち上がると、美織は「ちょっと待った」と手の平を突き出す。

驚いて首を傾げる夏歩に、美織は突き出した手を自分の口元に持って行って、人差し指でトントンと唇の端を叩いた。


「夏歩、ここにクリームがついてる」



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