素直になれない夏の終わり
すれ違いざま「なっちゃん、先にお風呂?」と津田に問いかけられ、これには無視せずに答える。
「着替えて顔洗ってくるだけ」
「せっかくだし、お風呂入っちゃえば?来てすぐに沸かしたから、もう沸いてると思うよ」
えっ、と思わず声を漏らして、夏歩は津田を窺う。
「今日はちょっと肌寒かったからね。ほら、季節の変わり目は気を付けないと風邪引いちゃうから、帰ってきたらすぐ入れるよう支度しておいたんだよ」
確かに今日は夕方からグッと気温が下がったので,会社を出た時夏歩は、上着を持たずに半袖で出勤したことをかなり後悔した。
道すがら、帰ったら温かいお風呂に浸かりたいとも思った。でも帰ってから沸かすのは面倒くさいとも思った。
それがなんと、もう沸いていると言う。
とっても嬉しい気持ちが顔に出ないよう力を込めて「そう……」と短く返し、夏歩はくるっと向きを変えてクローゼットに向かう。
開けてしゃがみ込み、収納ケースの引き出しから下着を一式取り出す。