素直になれない夏の終わり
「説明してる間に、冷めるから」
だから作り方は言わなくていいと言外に込めたのは、ちゃんと津田に伝わったらしい。
そっか、じゃあまた今度。とさして残念そうでもなく軽い調子で言って、津田は中断していた食事を再開する。
夏歩もまた、黙々とスプーンを動かしてカレーライスを口に運んだ。
本当はカレールーの作り方というものに興味はあったけれど、先に津田は“手間がかかる”と言っていたので、その手間を聞いてしまったらお礼をしないわけにはいかなくなる。
でも、素直にありがとうと言っている自分が想像できなくて、同窓会の時のお礼もまだである夏歩としては、これ以上お礼をしなければならない事柄を増やしたくはなかった。
そうでなくとも、本来ならば感謝してしかるべきことの連続なのだ。
例えば毎日のご飯、お弁当、今日のお風呂もそう。
黙々とスプーンを動かしながら、夏歩はチラリと津田を窺う。
改まるとどうしても無理だが、サラリと何気ない調子でなら言えるかなと思った。思ったけれど、いざ口を開こうとした時に、タイミング悪く津田が顔を上げたりしたからもう言えなくなった。
何事もなかったかのように皿に視線を落として、カレーライスを食べる。