素直になれない夏の終わり
「なっちゃんの家のキッチンさ、段々とキッチンらしくなってきたよね」
「キッチンらしいってなに。キッチンはキッチンでしょ」
食べながら夏歩が答えると、「そうなんだけどさ」と津田は笑った。
「でも初めは、あんまりキッチンって感じがしなかったから。使われてなさ過ぎて使用感が薄かったからかな。鍋とかフライパンは大きさ違いで充実してるし、オーブンレンジもあるのに、使わないなんて勿体ないと思ったよ」
そう言われても、鍋やフライパンは大きさ違いのセット売りがたまたま安かったので買っただけで、オーブンレンジに至っては実家からのおさがりだ。
まあ一人暮らしを始めた当初は、弁当箱まで購入するほど夏歩にもやる気はあったので、そこまで揃えたというのもあるけれど。
「ああでも、調理器具は充実してるのに、小物はほとんどなかったよね。鍋もフライパンもあるのに、お玉もフライ返しもないのは驚きだった」
「……そのうち買おうと思って、忘れてたの」
小物は後で揃えようと、ひとまず大物から揃えたところまでは良かったのだが、その“後で”を先延ばしにしているうちに、当初のやる気がどこぞへ旅立ってしまったのだ。
それは未だに、帰ってくる気配がない。