【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
上司に酒を勧められた新入社員のごとくかしこまって、私はテーブルにあった空のグラスを手に取る。
慣れた動作で尊さんがボトルを傾けると、芳醇な香りとともに赤紫の液体がとくとくとグラスを満たしていった。
ワインなんて……というか、お酒自体初めてだけど大丈夫かな。
とっくに成人し、今年でもう二十五になるけれど、私はこれまでアルコールは一切口にしたことがなかった。
過保護な両親が、酒を飲むことはおろか、職場でのそういう席に参加することすら許してくれなかったからだ。
ときどき凛子が「黙って飲んじゃえばいいじゃん」と誘惑してきたが、そこまでして飲みたいわけでもなかったし、両親に反抗するみたいで気が引けた。
でも、尊さんがそばにいてくれる今なら……。
私は勇気を出して、薄いグラスのふちに口をつけた。尊さんは長い脚をゆったり組んで、その様子を見守っている。
「……美味しい」
ひと口のワインをゆっくり舌の上に広げながら味った私は、その余韻を楽しみながらしみじみ呟いた。
喉が焼けるような感覚にはまだ慣れないけれど、このワインの味は素直に好みだ。いくつもの味が絡まり合い、濃厚で深い味わいがする。