【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
どんなに周囲の空気が汚れようとも、美織だけは美しく透明な心を持ったままでそこにいる。そんな神々しさすら感じさせる彼女に、俺自身浄化されたいのかもしれないな。
今回が初対面であるゲストたちを中心にひと通り挨拶を済ませ、軽く食事をしながらそんな物思いにふけっていた時だった。
「お久しぶりです、鞍馬さん」
上品で静かな低音を響かせて、和服姿の男性が近づいてきた。
「道重社長、来ていたんですか」
懐かしい顔に、俺は思わず口元をほころばせた。
「ええ。どうですか最近、うちの和菓子の評判は」
「相変わらず人気ですよ。欧米の方々からの評価も高い」
「そうですか。それは安心しました」
彼は銀座に本店を構える老舗絵和菓子店『道重堂』の社長で、数年前一緒に仕事をした仲だ。
基本的に俺は甘いものがあまり得意ではないが、実家にいた頃に母親が買ってきた道重堂の和菓子だけは好きで、その味に一目置いていた。
だから、スカイイーストの日本路線で出す機内食に和菓子を提供したらどうか、という提案が社内であった際も、道重堂の和菓子を強く推した。
とはいえ俺の一存で決められるものではないので、開発部門の社員たちと一緒に他社製品も含め試食を繰り返し、その正当な結果として道重堂の菓子が採用されることになったのだ。