【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「忌々しい奴だな。甘っちょろい御曹司に喧嘩ができるとは意外だったよ」
「俺だって、少年時代に習っていた空手をこんな場所で披露することになるとは意外だったよ。……しかし、そんなことはどうでもいい。さっさと美織を返せ」
「嫌だと言ったら?」
銃を構えたままの勝又さんが、じりじりと尊さんの元に近づいていく。しかし尊さんは臆することなく、瞳を鋭く細めて短く言い放った。
「力づくで奪い返すまで」
そして一瞬の隙をつき、勝又さんに襲い掛かる。
「くっ……!」
素早く勝又さんの懐に入った彼は、真っ先に銃を握った腕をつかまえて、強い力を籠める。
勝又さんの手は小刻みに震え、やがて力を失った手から銃が床に落ちた。尊さんはその銃を素早く足で蹴り、部屋の隅へと遠ざける。
しかし、尊さんは銃の処理に気を取られすぎたのか、今度は逆に勝又さんに隙を突かれた形で体当たりをされ、ふたりは間合いを取った。
その刹那、勝又さんの瞳がちらりと私の姿を確認し、胸がどくん、と胸が重い音を立てて揺れた。
「……こんなこともあろうかと」
勝又さんが、不気味な笑みを浮かべながら、スーツの内側に手を入れた。そうして取り出したのは、あろうことかもう一丁の拳銃。