【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
そんな思いで、腕組みをして壁にもたれかかる尊さんをじっと見つめれば、彼がからかうような口調で尋ねてくる。
「なんだよ。あ、俺の格闘シーンに惚れ直したか?」
「はい。さっきの尊さんは、正義のヒーローのようでした。カッコよくて、強くて、頭がよくて、愛情深くて……あなたには弱点がひとつもないんだなって、改めて思わされました」
素直に答えた私に、尊さんは少し首を傾げて考えるそぶりを見せた。そして壁から背中を離してこちらに歩み寄り、私の隣に腰かけるとこう言った。
「……それは違うぞ、美織」
「え?」
「俺にも弱点はある。たったひとつ……お前という弱点が。お前の苦しみは俺の苦しみだし、お前が傷つけられたら俺も悲しいんだ。だから、今回のようにひとりで危険な場所に乗り込もうとするなんて、今後は二度と考えないで欲しい。前にも言ったろ? つらいときはつらいと言え、助けてほしい時は助けを求めろと」
そうだった……。私が職場で理不尽な扱いを受けていると知った時、尊さんは私以上に腹を立て、そう言ってくれた。
なのに、私は独りよがりな思いにとらわれて、また彼を悲しませてしまった。今度こそ、約束を守らなきゃ……。