【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「実は五年前に亡くなってるんです、病気で。でも、一緒に店をやれた間、家内には職人気質の私には気づけなかったいろんなことを教えてもらいました。だから、それまでやっていた店の名を変えて、家内の名前にしたんです。いなくなっても、一緒に店をやれてるって思いたくて」
大将は店の引き戸のガラスからうっすらと透けて見える暖簾の〝かずみ〟という文字を見つめ、そこに奥様の面影を重ねているかのようにしみじみと目を細めた。
「そうだったんですか……。奥様も喜んでいますね、きっと」
悲しいけれど心温まるエピソードに感動してそう口にすると、大将は照れくさそうに笑ってこう言った。
「まぁ、私みたいな偏屈なヤツと一緒になってくれるのなんて、あいつくらいしかいなかったんですよ。でも、お客さんたちもご夫婦なんでしょ? 見た感じまだ新婚そうだから、仲が良いでしょう」
「え? その……まぁ。あっそうだ、次はコハダをください」
まさか、こっちに話を振られるとは……。
返答をごまかすため、慌てて次のお寿司を注文する。尊さんは「俺はトロを」と注文しつつ、私をちらりと横目で見て笑いをかみ殺していた。