【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
飲みかけのペットボトルを差し出され、とんでもないと首を左右に振る。すると勝又さんは眼鏡の奥の瞳を意地悪く細め、こんなことを聞く。
「間接キスとか気にしました?」
「えっ……? いえ、そういうわけでは」
「そっか。気にしてくれたら俺はうれしかったんですけどね」
彼は軽く笑って、残りのプロテイン飲料をごくごく喉に流しむこむ。
今の発言、なんとなく意味深に聞こえたんだけど……気のせいかな。気のせいだよね?
胸の内で自問自答していると、勝又さんはスッとベンチから立ち上がる。
「じゃあ、俺はこれで。ごちそうさまでした」
「あっ、はい。こちらこそ、丁寧にご指導いただきありがとうございました」
「あんな感じでよければまた教えますよ。ジム友ってことで」
「ジム友……」
聞き慣れないフレーズだけれど、悪くない響きだと思った。
新しい友達ができたのは何年ぶりだろう。しかも、自分の意思で入会すると決めたフィットネスジムで、というのがまたうれしい。
親元を離れて間もないけれど、さっそく自分の手で新しい世界を広げられたような気がして。