その少女は夢を見る


少し懐かしいなぁ、なんて考えてしまう。



僕には、仲の良い友人…というのはほとんど居なかったものの、“家族”は結構居たりした。



とは言えみんな一人として血の繋がりはなく…名前だけの“家族”で。



それでも僕達はとても仲が良かった。



特別可愛いわけでも、何か取り柄があるわけでもない僕を溺愛するかのように大切にしてくれていた。



妹であり親友の黒瀬桜。



兄と呼んでいた、桜の兄である黒瀬葉介(くろせようすけ)。



他校の同級生であり、兄と呼んでいた赤崎龍都(あかさきりゅうと)。



龍兄と同じクラスで、弟と呼んでいた青本尊(あおもとたける)。



他校の同級生の男の子で、双子のように息が合うから双子と呼んでいた紫乃雅(しのみやび)。



僕達6人は、ずっとずっと一緒に居た。



出会ったのはそんなに昔じゃないのに、まるで本当の家族のように感じれて…。



多分、家庭環境が複雑な人達の集まりだったから、家族のあたたかさとかを知りたかったんだと思う。



だからこそ僕達は…言い方を悪くすれば、傷の舐め合いのように…お互いを必要とし合った。



多分、みんな気が付いていたんだと思う。



それがただの一時のものにしかならなくて…本当の家族にはなれないこと。



それでも僕達は寄り添い続けた。



…それが壊されたのは…あの時なんだ。









“…巫山戯んな、”









僕が余計なことを言わなければ、あの楽しい時間が壊れていくこともなかった。



全て全て全て全て全て…僕のせいなんだ。



僕が何もしなければ…余計なことを言わなければ…



みんなはずっと、一緒に居られて、幸せになれていたのに。



















僕なんて、存在しなければ、



















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