一途な執事と甘いティータイム
「じゃあまた後でね、菓乃ちゃん」
「ちょっ……!」
大河はいつも通りのちょっとムカつく王子様スマイルを浮かべて行ってしまった。
大河のあんな顔、初めて見た。
不本意ながら長い間一緒にいるけれど、いっつもニコニコしてるイメージだったから。
「あついですねっ」
あっ、美菜子が隣にいること忘れてた。
ニヤニヤと笑いながら私の肩をポンポンと叩いてくる。
美菜子が思うようなことには多分ならないから。
「もう美菜子ってば、からかわないでよ」
「どうすることにしたの?」
「うーん……あっ、ちょっとトイレ行ってくるね!」
もうすぐ休憩が終わるから行っておきたかったというのもあるけれど、半分は逃げてきたようなもの。
賑やかな教室や廊下とは違ってトイレは静か。
そんな空間で私の深いため息だけが響いた。