一途な執事と甘いティータイム
「や、だ……たすけて」
こわい、こわい。
早く、誰か。
こんなところで泣きたくもないのに涙が溢れてくる。
ぐちゃぐちゃになる視界の外で、男の人たちが笑っているのが見える。
「ありしまっ……」
早く助けてよ。
私の専属執事でしょっ!?
何やってるの?
私を守ることが仕事でしょっ!?
"俺は菓乃を必ず守る"
そう言ったのは誰……?
ねぇ……このままじゃ、私───
「すみません、お嬢様をいじめているのはどこの誰でしょうか?」
「誰、あんた」
私に向いていたこわい目が逸れる。
私に触れていた手が離れる。
「私ですか?俺は菓乃の執事です。俺の大切なお嬢様、返していただけますか?」
有嶋だ。
有嶋の声がする。
涙のせいで姿は見えないけど……
いつも隣で聞いているその声を聞いてなんだか安心した。
ふっと力が抜けた私は、強い睡魔に襲われたかのように瞼が落ちてきてスーッと暗闇に吸い込まれて行った。