一途な執事と甘いティータイム
まずはそっとこの会場から出る。
ここの会場には何度も来たことがあるから、だいたいの場所は把握している。
「菓乃お嬢様、どうされました?」
「お手洗いに行きたくて……」
「それではあちらの角を曲がったところにございます」
「ありがとうございます」
嘘をつくのは、なれたもの。
さらりとトイレに行くと見せかけて、その奥の階段へと向かう。
角を曲がってしまえば、ドアマンには私の姿は見えやしない。
誰にも見つからず広すぎるロビーへとたどり着いた。
最難関はここから。
堂々と玄関から出るという手もあるけれど、嘘がバレてしまいそう。
こうなったら、脱走経路はひとつしかない。
それは、この豪邸の裏道。